「狼と香辛料」著者・支倉凍砂さん
本作の見どころは、捜査官であるヒロインのバディを務めるロボットの言動が、だいぶウェッティなところだと思います。
個人的な白眉は、彼には果たして心があるのかないのかみたいなストーリー展開の中で、バディのロボットが必死にヒロインに謝罪してくるシーンです。
その謝罪は人間の真似? それとも……? というヒロインの困惑と迷いからしか得られない栄養素を供給してくれます。
またこのバディがロボットであるせいで、かえって感情表現が直接的なのもよいのです。
サスペンスというストーリーゆえに危険な目にあったりするのも、彼らが互いに考えをぶつけ合う良い理由付けになっていて、
ぱっと見の世界観やストーリーから想像するよりも全然、情緒に比重が置かれています。
異種族恋愛譚好きに刺さる作品だなと思いました。
「姫騎士様のヒモ」著者・白金透さん
アニメならではの再解釈と再構成、そして原作のSF設定やストーリーが音声や映像を得て、
新たな『ユア・フォルマ』が生まれた。
エチカとハロルドのバディに心乱され、ミステリとしての牽引力も素晴らしい。
アニメを見たなら、未読既読にかかわらず原作小説にも触れたくなるはず。
「スパイ教室」著者・竹町さん
思わんじゃん?
4年前に原作1巻を読んで感動した作品が、見事にヒットし、アニメ化。にまにまの笑顔で視聴始めたアニメ第一話が「まさか原作1巻丸ごとカットされている」なんて!!
しばらく固まって「……大丈夫かぁ? 二人の関係性が伝わるかぁ?」なんて面倒なファン目線で見始めれば、カットからしたからこそ随所に散りばめられた、『匂わせ』のオンパレード!
うむ、これはこれで美味しい。むしろ、より美味しい。表情、声、セリフから醸し出される、二人の関係や絆。
ハッキリと描かれないからこそ妄想が膨らむこと、膨らむこと。
結局、アニメ第一話を見終える頃には「また『匂わせ』やがって!!」とすっかり興奮しきっていました。
『「ロボット嫌いの捜査官」と「ミステリアスな性悪ロボット」』
そんな凸凹の二人の関係を、想像豊かに見てしまうアニメでした。
もしかしたら原作未読の方が、むしろ『匂わせ』を楽しめるのでは?その後で原作1巻を読んだら、また違う感動があるかもしれませんね。
私が二人の関係性を推す人間なので、こんなコメントになってしまいましたが、電索シーンやSF世界観、人工知能の問題など惹かれる要素も山ほどありますよ!
「探偵はもう、死んでいる。」著者・二語十さん
SFならではとでも言うべきか多くの専門用語と、複雑かつ重厚な世界観。考察の余白を残した登場人物たちの人間関係にもこの作品世界の奥行きが感じられる。もしそれでも少し難しいと感じたなら、電索官エチカとその相棒ハロルドの「心」のやり取りにフォーカスして見てみると、『ユア・フォルマ』という物語そのものが浮かび上がってくるような気がします。
「七つの魔剣が支配する」著者・宇野朴人さん
理解が及ばない相手の真意を探る時、人はそこに自らの悪意を投影する。――この作品を見て、私が真っ先に思ったことだ。
脳侵襲型情報端末「ユア・フォルマ」を介して主人公エチカが行う「電索」、すなわちダイレクトな人間の内面の分析。
SF技術ではあるが、現実に比してそう遠いものとは思わない。人間の脳は日に日に解き明かされてそのブラックボックスを
縮めつつあり、入れ違うようにして新たなブラックボックスが生まれつつある。作中における「アミクス」のような存在が
現実に現れるのはもはや時間の問題とさえ言えるだろう。
いわゆる「バディもの」のジャンルにおいて、相棒同士の相互理解というのは避けて通れないテーマになる。当作におけるエチカと
ハロルドもまた例外ではなく、人付き合いを好まないエチカの性格も相まって、両者のコミュニケーションには多くの壁が立ち塞がる。
人間同士ですらそうなのに、重ねてこの作品では一方が「人を模して造られたロボット」なのだから尚更だ。「電索」という能力で
反則的かつ直接的に人間の内面を知ることが出来るエチカだが、皮肉にもハロルドに対してだけは古式ゆかしい交流の段取りを
踏まざるを得ない。疑い、信じ、裏切られ、傷付く――婉曲でもどかしいその全てが、遠い「理解」へと進む彼らの足取りである。
一見クールで取っつきづらい印象のエチカだが、彼女を(失礼ながら)「読心能力を持つコミュ症」と解釈してみると一気に親しみが
湧く。トライアンドエラーで躓きながら得体の知れない相棒を少しずつ理解し、適切な距離感を測り、互いに譲歩とすり合わせを重ねて
パフォーマンスを上げていく――これは現実でも大抵の人間が直面する厄介な課題で、苦労はどうしても避けて通れない。
彼らはよく話すのもいいし、時には喧嘩するのもいい。ただひとつ悪手があるとすれば、それら全てを面倒くさがって極論に走ること
――「理解の及ばないものは危険だから排除すべき」という短絡に陥ることだ。が、エチカはそれを選ばないだろう。そう思わせてくれる
誠実さが彼女にはあり、故に彼らの未来に幸多からんことを私は願う。
翻ってブラックボックスとは可能性だ。祝福も災厄も余さず詰め込まれた「箱」であるハロルドに、エチカは何を見出すのか?
あるいは逆に――彼女が見出すものこそ、ハロルドの中身と成り得るのだろうか。
「はたらく魔王さま!」著者・ 和ヶ原聡司さん
「ユア・フォルマ」は我々が夢見た近未来と想像した近未来SFの常識を一歩先に進めた作品です。
きっとそう遠くない未来に我々人類が向き合うことになる葛藤と、それを乗り越えられるかもしれない喜びを是非ご覧ください。
あと天然の羊毛もっちりのFluffyが可愛すぎて抱きしめて眠りたいので商品化してください。
「レプリカだって、恋をする。」著者・榛名丼さん
人の機憶に潜れるなんて最強すぎる! と思いきや、電索官エチカとアンドロイドのハロルドが生きる近未来では、辿り着く真実も一筋縄ではいきません。
事件を通して絆を深めていく二人が胸に抱くのは、「あなたを知りたい」という切実な思い。揺れ動いては響き合う関係性と、鮮烈でカッコいい電索シーンもお見逃しなく!
「東京レイヴンズ」著者・あざの耕平さん
人の知性と機械の知性、人の感情と機械の感情(?)のファースト・コンタクト。ブラックボックスは人間にだって存在します。なら、人と機械の意識の差とは? 自我とは、心とはなんなのか……なんて考えてしまいました。
エチカとハロルドの始まりが気になる方は、原作一巻を読んでみるのがおすすめです。ミステリーの文脈に沿った魅力的なストリートと、美しい映像、音楽。何より、真摯な主人公たちの歩む先が気になります!